コラム
みちしるべ
2019-03-01
今日から3月。今から8年前の2011年3月11日に発生した東日本大震災のライブ残像は、遠い地に居てもまだまだ脳裏から消えない▼瞬く間に地獄絵図に変わった被災地。その後の復興状況は、震災から8年経ってもまだまだ道半ばだ。このほど公表された新しい公共工事設計労務単価からも見て取れる▼例えば、主要12職種のうち、「型わく工」は、東北の宮城県が3万2300円なのに対して、鳥取県は2万0700円と1万円以上の単価の格差がある。程度の差こそあれ、鉄筋工、大工、左官もそうだ▼オリンピック特需で、もともと単価の高い東京都との開きも大きい。大幅な需要の増加に対して人手(技能者)がまったく足りないためだが、「それにしても」の思いは拭いきれない。(鶯)
みちしるべ
2019-02-28
鳥取市は26日に5件の入札を執行したが、5件とも入札中止になった。このうち3件は1社のみが参加、2件は全社が辞退または欠席した。5件で延べ70社が指名されていたが、入札会場に現れたのはわずか3社というから事態は深刻だ▼入札中止になったのは5件とも災害復旧工事で、土木B級向けが1件、D級向けが4件だった。土木D級は、以前から入札参加者が少ない傾向があるため指名業者を15社に増やしているが、効果は表れていない▼近年は規模の大きい自然災害が多発している。市民の安全・安心を守るためには、速やかな復旧が急務だ。そのためには地元建設業界が十分な機動力を確保しておくこと。つまり人材の確保と育成が欠かせないだろう(鷹)
みちしるべ
2019-02-27
インスタントラーメンを開発した日清食品の安藤百福夫婦を題材にしたNHKの朝ドラ「まんぷく」もいよいよ残り1カ月近くとなり、佳境に入ってきた▼このドラマで主人公のお母さん役の松坂慶子さんの決めゼリフに「私は武士の娘ですから」というのがある。この実在のモデルは鳥取藩の武士の娘であったらしい、と調べたら出てきた▼ドラマの脚本家はこのセリフをよく使う。滑稽な道化師役の言葉となっているが、笑いとともにちょっとしたペーソス(もの悲しさ)が漂ってくる。お母さんは、この言葉をはくことで様々な思い、心のバランスを保っているのだろうな、と想像する▼人間だれしも、この手の言葉を心の拠り所としている面があり、さしずめ私などは「私は記者ですから」というところだが…。(鵲)
みちしるべ
2019-02-26
予定価格を算出する際に使用する19年度の労務単価が発表された。厚労省の毎月勤労統計に不正がみつかり、飛び火して同じく統計を基に毎年見直す国交省の労務単価も、今年については前倒し適用が途切れるかにみられていた▼労務単価は前年「10月調査」を受けて単価を改定する。全国的に建設現場の労働者不足は顕著。単価は8年連続して引き上げられ、97年度以降で最高値となった▼あとは公共事業費もピークだった97年度までに回復することが期待されるが、インフラ点検に伴う国土強靭化を加えても19年度は7兆円規模。09年度の水準に並ぶのがやっとだ▼予算が増えても人手不足で消化ができないとなれば、元も子もない。新単価を下請け代金を含め、賃金水準のアップにつなげる努力が欠かせない。(鷲)
みちしるべ
2019-02-25
少子高齢化―。常にこの“枕言葉”の昨今。後継者不足にはどの分野も頭を痛めている。現社長が70代~80代では深刻だ。中国地方でも第一次産業は言うに及ばず、商業でも対策が打てない▼翻って建設業界。若者を引きつけるため、国は新年度から中小建設事業主が活用できる「人材確保等支援助成金」や「人材開発支援助成金」という新制度を設けるなど躍起だ▼業界を取り巻く環境は、言葉以上に厳しい。今流に言えば、行政も“建設業界に寄り添う計画”を次々と発案する。厚労省が新規導入する前述の二つの「助成金」もそうだ▼「人材確保」「人材開発」に支援金。いずれも業界にとっては朗報。だが、若者が就業しにくい体質から脱し切れていないのも実情。現実と新施策とのギャップ。どう埋めるか。(雉)
みちしるべ
2019-02-21
政府は登記変更が長期間にわたってされず、所有者が不明な土地について、裁判所が選任した管理者による売却を可能とする関連法案を今国会に提出する。土地の所有者が特定できずにインフラ整備事業が滞る。空き地を活用できない。といった各自治体が抱える問題の抜本的な解決策として機能させる狙いだ▼売却までに必要な手続きは、法務局に対する土地所有者を特定するための調査権限を強化し、特定できなければ管理者を選任して売却するというもの▼「調査権限を強化」することで何が可能となり、必要となるのか。どれほどの調査期間とコストを要するのか。要件次第では適切な人員配置ができないケースも起こりうる▼円滑なインフラ整備につながる変化が起こることを期待したい(鶴)
みちしるべ
2019-02-20
就職活動の際に「やりがいは何ですか」という質問が多くの企業で挙がる。建設業界では、「地図に残る仕事」や「社会の役に立つ」を挙げる人をよく目にする。やりがいは、その仕事に取り組むモチベーションであり、目標となる▼草刈りのボランティア活動を取材した時に、「道をキレイにして喜んでもらいたい」や「地域貢献」という言葉が聞かれた。目標を持っていると仕事に対する熱意が変わってくることを、取材をしているうちに実感した▼建設業において、0から1を生み出すまでには、構想・設計・用地・施工など各方面で多くの人が関わる。「より良いものを」と強い思いが引き継がれ完成を迎える。この一連の流れこそ業界の魅力である。若い人に少しでもやりがいを感じさせることが肝心だ。(雛)
みちしるべ
2019-02-19
国の2018年度第2次補正予算が成立して国土交通省の県内四つの事務所から工事・業務の発注見通しが公表された。県もその配分額を確認して五つの管内局・事務所から今週早々にも発注見通しが一斉に出て来る▼各社それぞれお目当ての発注予定カ所の工種、対象クラス、概算工事費をみながら、他社の施工能力点、とりわけ会社と配置技術者の工事成績、受注額点でシミュレーションを巡らす▼県は、この2次補正工事は原則全部、3月20日までの正味1カ月で入札執行しなければならない。件数が多ければ基本週2回の入札日を増やして、同一日に同工種同クラスの複数入札を避ける工夫も▼県は骨格予算で新年度、すぐに工事は出てこないという思惑からか、各社とも2次補正に結構力が入っているようだ。(鴉)
みちしるべ
2019-02-18
小欄が暮らす鳥取市の片隅にある地域も、高齢化が一気に進んだ。賑やかだった子供たちの声も、いつの間にかあまり聞かれなくなったし、地域の人が歩いている姿は平日も休日も少ない▼県内にある観光地の多くは、山や海などの自然を売り物にして人を呼び込んでいる。自然が相手だから、そこは常に災害と隣り合わせといえる。一度、大きな災害が発生すれば、観光への打撃はもちろん、古くからこの地で暮らす人もその地域を離れてしまう▼高齢化が進む地方にとって、インフラが整っていることが、生活していく上での最低条件ではなかろうか。国は、人口の少ない地域にやさしくなければいけない。そして、新しい土木の技術は、この地の人達にたくさんの安心を与えることが、必ずできると思う。(鷺)
みちしるべ
2019-02-15
県内建設業の倒産件数は年々減少傾向にある。昨年1ケ年間は4件(本紙既報分)だった。倒産要因は受注不振や業績低迷による資金繰りの行き詰まりなど▼今、業界は昨年の大型災害による復旧工事が各地ケ所で一斉に進められている。一方で、災害復旧工事に対する応札者無し、不落札といった工事物件も多々発生している。原因は人手不足と資材単価の高騰。某社長曰く「被災地の復旧は我々の使命だが、利益が見込めない工事を受注しても?」「特に災害復旧工事は!」と、ジレンマを含む消極的な言葉を漏らす▼今後、多発する自然災害に向け国土・県土強靱化施策が集中的に推し進められていくが、同時に建設関連産業全体が企業収益をしっかりと得られなければ、公共事業としての意味合いが薄らいでしまう。(雀)