コラム
みちしるべ
2022-11-22
地味な仕事でも、実は社会や経済活動を立派に下支えしている職業がある。いや大半がそうか。お金を動かして稼いだり、SNSの視聴回数を増やして広告収入を得るといった類はどうも性に合わない▼建設産業はまさに額に汗して日々、住民の生活を支えている。建設DX(デジタルトランスフォーメーション)によって効率化も迫られているが、土台となるのは現場に携わる技術者達の努力や経験値だ▼その指標となるか。県の優良工事が決まった。工事成績は毎年ハイレベルになって、従来の選定ラインでは受賞に至らなかったケースも▼他方、建築部門が創設されたのは良かった。土木と違って点数が伸びないなか、一定の候補枠を確保。受賞した業者も喜んでいた。土木も建築も同じ建設現場。それぞれ公平に光を当てたい。(鷲)
みちしるべ
2022-11-21
世界気象機関(WMO)の発表によると、2021年の温室効果ガスの世界平均濃度が観測史上最高を更新したという▼温室効果ガスは、二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素からなり、増加比率を見るとメタンの増加が顕著で、メタン二酸化炭素と比べ大気中での寿命が短いことなどから、メタン排出量の削減が地球温暖化対策への速やかな効果が期待できるとしている。メタン排出の約6割は、畜産や稲作、化石燃料採掘、埋め立て、バイオマス燃料など人間活動が占めているということを忘れてはいけない▼50年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルの実現に向けて、国や自治体から、各企業まで様々な取り組みを打ち出しているが、達成までの道のりは簡単ではない。(雛)
みちしるべ
2022-11-18
少し前になるが、11月10日は「技能の日」だった。一人前になれば「職人」と呼ばれ、さらに技を極めると国から「名工」の称号が与えられる。この域に到達するには、積み上げた経験と毎日の努力に違いない▼普段は見えない地中を探る仕事がある。地質の調査に続いて、掘削を始めるのは経験に基づく高度な技能を持つ人たちだ。探査や掘削の技術は大きく進歩しているが、この人たちの技が欠かせない▼県さく井協会と技能士会が毎年、県内各地に災害発生時には役に立つ防災のための井戸を寄贈する活動も18年目。この人達の防災意識は高く、災害時にはどれだけ水が必要なのかを地域に伝える▼「当たり前の日常が、どれほど幸せなことなのか」。熟練した技を持つ人たちの地道な活動が続く。(鷺)
みちしるべ
2022-11-17
フランス産のワイン「ボジョレ・ヌーボー」の販売が、きょう解禁される。今年はブドウの糖度が高く、仕上がりは上々という。ただ、ウクライナ侵攻の影響で空輸ルートが制限されて燃料費が高騰。円安も重なり、価格が高くなるのは確実で、秋の風物詩にも値上げの波が及んだという印象だ▼輸入を取り巻く環境が厳しくなる一方、影響を受けにくい国内メーカーでは、国産ブドウを使ったワインを製造する取り組みが広がっており、県内でも新たな設備投資の動きが出ている▼ワイン生産に限らず、物流コスト上昇は経済全般のマイナス要因となりがちだが、政府系金融機関によると、円安や経済安全保障の観点から生産の国内環流が進む向きもあるとか。結果的に建築需要の創出につながれば、と願ってやまない。(鴛)
みちしるべ
2022-11-16
「ヒト・モノ・カネ」から「ヒト・ヒト・ヒト」へ―人的資本経営への転換が叫ばれる中、再び「EQ」が注目を集めている▼情緒的知性や感情能力といった表現で90年代以降にブームを呼んだが、かつては心理的な面にフォーカスした自己啓発の色が濃かった。しかし体系化が進むにつれ、今では組織や人間関係の中でどう役立てるかを主眼に、実践・活用のステージに入っているという▼互いに本音で向き合い、時には弱みも隠さず見せる。日本が十八番にしてきた「人間味ある仕事」の信条を、今後は仕組みとして落とし込んでいく必要があるようだ▼月内の成立を目指す第2次補正予算。柱の一つに位置付けられる「人への投資」が実効性を発揮するため、まずはパワーマネジメントからの脱却が肝要か。(鵯)
みちしるべ
2022-11-14
このほど発表された今年の新語・流行語大賞のノミネート語。「BIGBOSS」「令和の怪物」など野球関連のキーワードや、コロナ関連は「オミクロン株」のほか、マスクを外して顔を人前で晒すことに抵抗を感じる「顔パンツ」という言葉もノミネートされた▼流行語大賞のノミネート語には初めて聞いたような言葉もある。様々な流行語がノミネートされているおかげで今年を振り返る指標となる▼業界ではどんな言葉がよく聞かれただろうか。筆者としては「働き方改革」や「担い手確保」、建築物の発注方式を巡っては「PFI」「デザインビルド方式」なども取材する中でよく耳にした。特に発注方式は受発注者の間で溝がなかなか埋まらない▼業界の声に寄り添うような発注方式を行政側にはお願いしたい。(隼)
みちしるべ
2022-11-11
来年3月開場に向けた北海道日本ハムの新しいホームスタジアム「エスコンフィールド北海道」が野球規則で定める規定に引っかかっていると複数のメディアが報じた▼同スタジアムはメジャー球場のような臨場感のある設計コンセプトだが、ホームベースからバックネットが近すぎるということが問題になっている。完成を楽しみにしていたファンからすると嬉しくない報道だ▼当然、設計者も施設建設の要件には色々な規定があるのは知っていたと思うが、設計する段階で野球規則に反していないか確認していなかったのか、確認後に完成間近で指摘されたのか、憶測が飛び交う▼米子市東山町に建設する新体育館。野球球場とはまた違うが、当然、スポーツごとの規定やバリアフリー化などを意識しなければならない。(鴎)
みちしるべ
2022-11-10
欧米人にとって日本の飲食店に入ると、おしぼりが当たり前に出てくるのが不思議らしい。「おもてなし」の精神は、万国共通で分かってくれる▼コンビニが提供するサービスもそうだ。公共料金の支払いにATMでの引き出し、宅配便の集荷受け付けまであり、まさにインフラの一翼を担っている▼最近では近所に工事現場があると、工事の内容や進ちょくを逐次知らせるチラシが各戸に配られる。掲示板にでも一枚、貼ってあればよさそうなものだけど。完成検査では「品質」「出来ばえ」に限らず、「社会性」や「地域貢献」も評価されることが要因か▼ムラの一斉清掃があれば、トラックや人も出す建設業者がいるし、河川工事では稚魚を放流するボランティアも。否応なくやらされているようで、過剰なサービスと言えなくもない。(鷲)
みちしるべ
2022-11-09
九州と北海道を拠点とするスポーツ新聞社が紙面発行を休止することを発表した。インターネットの普及に伴う事業環境の変化の中で、紙面発行を休止し、ウェブサイトでの情報発信に全移行を決定したようだ▼オートバイ業界でも電動化が進む。ホンダは2025年までに10モデル以上の電動車を投入することを公表した。ガソリン車特有のエンジン音や振動が無くなるかもしれないと、バイク乗りの間では寂しさが広がっている▼これから先、多くの新聞が完全ウェブメディア化する日がやってくるだろう。受信側は好きな時に簡単に情報が入手でき、発信側は間違いがあってもすぐに訂正できるなどメリットがある。しかし、後で直せるからといって、正しい情報を伝えるという原点を忘れてはいけない。(雛)
みちしるべ
2022-11-07
地球温暖化の影響が長く続けば、今世紀末には日本の平均気温が相当高くなる予測が出ている。猛暑で雨の降らない日が増加。半面、滝のような雨が降り続くこともあると予測する▼先月の下旬、日本技術士会と県測量設計業協会の催しで多くの話を聞いた。テーマは「気候変動の影響」。技術者が教訓や予測を基に知恵を絞る▼参議院議員の足立敏之さんは建設部門の技術士で、地球温暖化対策はライフワーク。鳥取市内での講演では「平均気温が上がれば大変なことになる。減災には国土強靭化のためのハード対策が欠かせない。充実した予算の確保に努力している」▼そして「河床掘削は水害対策に効果がある。地道な取り組みだが、重要な工事」。現場を知る技術者としての声が会場に響いた。(鷺)